武漢肺炎: マスク

開店前の薬局にマスクを求める行列が続きます。

 

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52045428

BBC NEWS JAPAN

マスクをする国、しない国 何が違うのか?

今の東京や香港、ソウルでマスクを着けずに外に出ると、周囲の顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまう。

新型コロナウイルスの大流行が始まって以来、マスクの着用が当たり前となっている場所がある。そうした場所では、マスクをしていないと社会からのけ者にされる恐れがある。

しかし、イギリスやアメリカ、オーストラリア、シンガポールなど、世界の多くの場所ではまだ、顔を見せたまま歩き回っても全く問題ない。

この違いは、政府命令や医療上の助言だけが理由ではない。そこには文化や歴史も絡んでいる。だが、今回のパンデミック(世界的流行)が悪化するにつれて、状況は変わるのだろうか?

当局の見解は

新型ウイルスが流行して以来、世界保健機関(WHO)の公式アドバイスは明快だ。マスクを着用すべき人は、あくまでも2種類のみ。症状のある患者と、新型ウイルスに感染した疑いのある人をケアする人だ。

このほかは誰も、マスクを着ける必要はない。これにはいくつかの理由がある。

ひとつに、マスクはウイルス防御としては不十分だとされているからだ。現時点での研究では、飛まつの拡散や汚染表面との接触によって、新型ウイルスに感染する。なので、マスクが防御として役に立つのは、感染者があなたの顔の近くでくしゃみやせきをしたときだけだ。だからこそ専門家は、せっけんを使ったこまめな手洗いの方がずっと効果的だとしている。

マスクを外すときには、手の汚染を避けるのに特別な注意が必要だ。マスクを着けることで、誤った安心感を抱いてしまう場合もある。

しかしアジアの一部では、誰もがマスクをするのが当たり前になっている。その方が安全だし、それが周囲への思いやりだと考えられている。

日本、中国本土、香港、タイ、台湾では、健康な人も含めて誰もが保菌者かもしれないというのが、大方の前提だ。だからこそ連帯意識の表れとして、自分が他人を感染させないようにするのが、大切だと思われているのだ。

一部の国では、政府がマスク着用を強く奨励している。中国では場所によっては、マスクをしていないと逮捕されたり処罰の対象になったりする場合もある。

しかし、アジア全域にマスクが広がっているわけではない。ここシンガポールでは、医療従事者用に十分な量を確保するため、国民にマスクを使わないよう政府が呼びかけているし、実際にほとんどの人はマスクなしで外を歩き回っている。政府に対する国民の信頼はかなり高いので、政府のこういうアドバイスはすんなり受け入れがちだ。

注意喚起としてのマスク

大勢があちこちでマスクをしている光景は、ウイルスの危険を視覚的に強調する効果がある。そのため、身の回りを清潔に、体の衛生を守りましょうと、自分や周りの「行動をさりげなく促す」効果が実際に期待できるかもしれない。

香港科技大学のドナルド・ロウ教授(行動経済学)は、「毎日出かける前にマスクをするのは、制服を着るのと似た儀式のようなものだ。人は儀式的な行動を通じて、制服が意味するものに見合った振る舞いをしなくてはと感じるようになる。つまり、顔を触らない、混雑した場所を避ける、社会的距離を置くなどの、より衛生的な行動をとらなくてはと、意識するわけだ」と話す。